不器用なたまご酒





 養鶏場……と呼ばれているそこは、主人の言っていた通り店の裏にあった。
 それも養鶏場などとは名ばかりで、二坪ほどのスペースに、ぽつんとカゴがひとつ置かれているだけである。
 その中にはワラが敷き詰めてあり、カゴの中央部分からはチューブのような太い管がついている。
 どうやらここからブランマルシェの卵が滑り落ちる仕掛けになっているらしい。
 管の先には卵が割れないようにか、クッションの敷かれた大きな木箱が取り付けられていた。
「ブランマルシェはいつもこのカゴの中にいて、卵もここで産んでいます……そりゃあもう、朝も昼も夜も、ここを動くことはありません。たまにはカゴから出て、このスペースを自由に徘徊していますが……」
 主人は続ける。
「彼女は高く飛ぶことはできませんので……塀は高く、天井には金具の格子を取り付けています」
 ……と、彼は頭の上を指差す。
 真上に上った太陽がサンサンと光を降り注ぎ、主人の頭をキラリと光らせる。
「……塀を登れば……人間ならこの裏庭に入って来るのは簡単だな」
 トワは白いペンキが塗られたその木の板を眺めながら言った。
 すると主人は申し訳なさそうに、
「ええ、そうなんですが……実は塀と天井の格子には特殊加工が仕掛けてありまして……」
 と、何かもったいぶる。
「特殊加工ぉ?」
「はい。さきほどから説明していたように、ブランマルシェは世界でも5匹しか居ない貴重なニワトリですし、本来ならこんな、物騒なところで育てたりはしないのですが……ニワトリとはいえ、セキュリティだらけの閉鎖空間に居てはストレスがたまってしまって、良い卵も産めません。……しかし、だからといって、他の大量のニワトリのように放し飼いにもできず……」
「ああ、前置きはいいから、本題に入れ、本題に!」
 ずっと立っているのも疲れてきたので、壁に寄りかかろうと、トワは体を傾ける。
 ところが。
「つ、つまりですね、ブランマルシェの盗難対策として、この塀と天井には電流を流しておりまして!」
 ……などと主人が言ったので、傾きかけたトワの体は、急回転をして後ろ向きに倒れた。
「そういうことは先に言えよオッサン!!」
「す、すみません!」
「……けど、それってブランマルシェも危ねーじゃん!」
「大丈夫です。彼女の体内には、電流が流れないようにするチップが埋め込んでありますから……」
「……ハイテクフォゥルめ」
 地面にしりもちをついたまま、トワは顔をゆがめる。
「つまり、犯人は壁に触れずにブランマルシェを盗んだってわけだな。店にはオッサンがいたんだし、その監視の目をすり抜けてこの裏庭養鶏場へ来るのは不可能だし。するってーと……」
 トワは考えながら、脇に居た白雪をちらりと見た。
 彼女は先ほどから一言も口をきいていない。
 もしかしてさっきのことを怒っているのかと思ったが……どうやらそうでもなかったようだ。
 白雪は裏庭のあちこちを歩き回り、何かを探している。
 おそらく、ブランマルシェを探すための手がかりに違いないだろう。
「……なー、姫野……?」
 トワはなんとなく気まずさも手伝って、おそるおそる、彼女を呼んだ。
「お前はどう思う?」
 ……と、聞く前に、白雪の言葉のほうが早かった。
「犯人は、居ないと思います」
「は?」
「ど、どういうことでしょう……!?」
 トワが奇妙な声をあげたあと、主人が同じように奇妙な声色で尋ねた。
「これを」
 白雪は置いてあった大きなドラム缶の下のほうを指差した。
 塀にぽっかり穴が開いている。
「この大きさ……ちょうどニワトリ一匹分だと思うのですが」
「……まさか、逃げたのかよ、ブランマルシェは!」
「子供ならまだしも、人間がこの穴を通れるほど小さいとは思えませんし。子供がニワトリを盗む可能性もないに近いでしょう。あともうひとつは、徹底的な根拠として……」
 白雪が、塀のそばに落ちているものを拾い、こちらに見せた。
「ブランマルシェのか?」
 トワが尋ねると、主人が黙って頷いた。
 それは鳥の羽だった。
「……ブランマルシェはイレギュラー。アビリティを持っている生物……そうか、俺達と同じなのか。チカラが使えるってことだな!?」
「これは推測ですが、おそらくブランマルシェは何らかのアビリティを発動させ、この塀を破ったのでしょう……そしてそのまま、外へ」
「なぁ、オッサン。店に居たときにヘンな音とか聞かなかったか?」
 トワが尋ねると、主人は上目遣いになり、記憶を探り始めたらしかった。
「……そうですね……特には……。ああ、でも、そういえば何かが焼けるような音が!」
「焼ける? って、何が?」
「さぁ……? 目玉焼きですかね?」
「なんじゃそら……目玉焼きが焼けるっつったら……フライパンの音か?」
 
 トワがそういったとき、空がバサバサ、と音を立てた。
 三人三様に見上げると、まるまるとした茶色い物体が、例の金具格子に乗っかっている。

「ああっ、ブランマルシェ!」
「あのニワトリかっ!?」
「そうです! 彼女です!! ほら、首輪に鈴がついてる!」
 主人が興奮したように両手で頭を掴み、ぶんぶんと首を振る。
「トワさん、行きましょう」
「ああ」
 白雪の合図に頷き、トワは裏庭の養鶏場から飛び出した。





 ――ブランマルシェは体を重そうにゆすりながら、金具の天井にのっそりと佇んでいる。
 顔は不機嫌の絶頂……と、いうところまでは行かないが、目はギラつき、時折、鼻息のようなものがフン、フン、と聞えた。
 首から上が定期的にチックタックと動くと、トワ達を見たり、自分の足元を見たりとせわしい。
 ……が、とりあえず今いる場所から飛び立とうとか、逃げ出そうという気はないらしい。
 トワと白雪はプレハブの二階の窓から屋根に出て、その様子をじっとうかがった。
「……一時的によ、あの格子の電流を切ってもらうのが一番だと思わねぇ?」
「無理です。さきほど店と裏庭を一通りみましたが、スイッチのようなものは見当たりませんでした」
「ちぇっ、ほんっとに物騒だな。何かあったときのことくらい、考えろって」
「とにかく、彼女がまた逃げ出さないうちに、捕獲しましょう。私がブランマルシェをひきつけますので、トワさんは翼で飛行して、彼女をこちらへ」
「……しゃーねーなー……まぁ、どっかに誰かに連れ去られたわけでもなくてよかったけど」
 言いながら、トワは背中に気を集中させた。
 ふわり、と半透明に近い翼がそこへ現れる。
 トワの足が浮き、移動を始めた。
 ゆっくりゆっくり、ブランマルシェに近づく。
 その間に、白雪が彼女に何か視線を投げかけていた。
 ブランマルシェがそれき気づき、動きを止める。
 白雪が何か一言発したわけではない。
 なのに、何故かブランマルシェは硬直し、そのまま固まったかのように動かなくなった。
「……よし。イイコだからそのまま動くなよ〜」
 トワはあと数センチ、というところまで、ブランマルシェに近づく。
 一度上空に浮上して、そのまま、ゲームセンターのクレーンゲームよろしく、彼女に向かって下降した……が、しかし……。
「クック、クワァッ! クックルクワァァッ!」
 と、突然ブランマルシェが叫びだした。
「げっ!?」
「トワさん、避けてください!」
 白雪の声に、トワは反射的に瞬間移動(テレポート)・アビリティを発動させる。
 数センチ場所を変えると、一瞬の後、そのすぐ隣を、高速で何かが通り過ぎた。
 それは熱を保っていたが、それほど大きなものではなかった。しかし、形状がしっかりしているわけでもない。
 言葉にするならば、光の塊といったところか。
「……い、今のは……!?」
「ブランマルシェの……アビリティですね。衝撃(インパクト)と、とても似ています。と、いうよりも、インパクトそのものですね」
「クックドゥ……クッククァッ、クックックッ……」
 何か鋭い瞳で、ブランマルシェがトワをにらんでいる。
「うっわ、もう最ッ悪。何が悲しくて、俺様がわざわざオフの日に、こんなやっかいなニワトリとアビリティ勝負せにゃならんのだか!!」
 トワは上空から、ブランマルシェに標的をしぼった。
「衝撃(インパクト)! レベル・ブロンズ! くらえ、このヤロ!」
「クワッ、ケーッ、ケケケ!!」
 ブランマルシェがなりふり構わず、鳴き散らす。
 トワから放たれた光弾と、ブランマルシェの口から飛び出たソレはまったく同じものだった。
 二つは空中で衝突し、火花を散らしてかき消える。
 二撃目を撃とうとして、トワは構えた。
 それを防ぐかのように、ブランマルシェが飛び掛ってくる。
「クアーッ!! ケーェェェェッ!!」
「ぅわっ!!」
 鋭いくちばしのラッシュ。
 トワの顔面にむけてブランマルシェが攻撃を繰り返す。
「いたっ! いて! いててっ……こんの、やめろバカ、ニワトリの分際で俺様の顔に傷つけるたぁどういう了見だ!!」
「クケーーッ!」
「ぎゃあっ、アホ、バカ、マヌケ! 目玉つぶれたらどうすんだよ!」
「カックルル、カケーッ、クククッッ!!」
「って、ンなとこまで! こらやめろっつってんだよ聞こえねーのかよっ!! 蒸し鳥にして食うぞ!?」
「ケケケッ、ケーック、ケコッ、クァッ、ケッ!」
「実現(リアライズ)、変換条件>七魂(ななたま)」
 傍らから白雪の声が聞こえた。
 直後、風を切る音とともに矢が飛んでくる。
 彼女のアビリティで創り出された、実在しない武器だ。
 矢はブランマルシェに直撃し、そのちょっとの合間だけ、トワはくちばし攻撃から逃れることに成功した。
「ああっ、私のブランマルシェ! ブランマルシェー!?」
 足元では主人が激しく首を振り、涙を流している。
「安心してくださいご主人。あの矢は傷つけるためのものではありません。一時的に精神ショックをうけますが、ブランマルシェの体に影響は及ぼしません」
「ああ、でも……ブランマルシェー!!」
「うるっせーな! ちゃんとそこに連れてくから黙って待っとけ!!」
 傷だらけになってしまった顔をなでながら、トワはパニック状態に陥っているブランマルシェを目で捉えた。
「姫野! アホニワトリはそっちに行ってる!」
「了解です」
 白雪がブランマルシェに飛びかかった。
 丸いボールを掴むかのように、彼女はその雌鳥をしっかり受け止め、抱きしめる。
「捕獲完了……」
「ククッ、クケーッ!!」
 ブランマルシェはまだ錯乱している。
「姫野!!」
 とっさに、トワは右手を伸ばした。
 そして……今にも白雪の顔にくちばしを突きつけようとする、ブランマルシェの顔面に手のひらを押し出す。

「クッ……ケーェェェェッ!!」

 ぐさり、と鋭い先端がトワの手のひらに突き刺さった。

「いっ……てぇぇぇぇぇぇっ!!」

 トワが悲鳴をあげたのと同時に、白雪がブランマルシェから矢を引き抜いた。
 その矢は、裏庭でひろった茶色い羽の姿に戻る。

「……大丈夫。ブランマルシェ、あなたの羽です」
 静かに白雪がつぶやいた。
 それが聞えたのかどうかは定かではない。
 が……、ブランマルシェは幾分か落ち着いたようで、奇怪な叫び声を上げなくなった。




「ブランマルシェーっっ」
 養鶏場の主人は涙でぐしゃぐしになった顔を、その雌鳥に擦り付ける。
 ブランマルシェはそれを知らん顔で受け入れ、ただ大人しくされるがままになっていた。
 50代の、ピンクのエプロンをした男性が、一匹のニワトリに頬ずり……それは、とても不気味な光景だった。
 その不気味な光景を眺めながら、トワは店に取り付けてあった鏡を覗く。
「……あああっ、ちくしょ。顔にこんなに傷つけやがって!」
「お疲れ様です」
「……へ?」
「ですから、お疲れ様です、といいました」
 白雪がトワに向かって、言った。
 口調はあくまでも淡々としていたが、どうでもいい。
「……俺様、もしかしてねぎらわれてたりしちゃう?」
「ご不満でしたら、取り消します」
「いや、不満じゃねーよ! けど……」
 正直驚いた。
 今まで白雪が、トワに対してそんなそぶりを見せたことがなかったからだ。
「いやぁ、もう、本当にありがとうございました、お二人とも!」
 主人は今度は満面の笑みを見せ、涙にぬれた手で二人のソレを握ろうとした。
 トワも白雪も、同時に両手を上げ、かわす。
「……とにかく、これで卵売ってくれんだろ? 1ダース頼む」
「……いえ、あの……とても言いにくいのですが……」
「ぁんだよ? もー急いでんだから、50文字以内で頼むぜ」
「ブランマルシェはその……今ようやく落ち着いたところですし。脱走したときにアビリティを使ったようなので精神力も衰えてますし……」
「……つまり?」
「卵を産むには、休ませませんと……」
「ああ!? なんだって!?」
「すみません、あの、お詫びとお礼を兼ねて、後日ブランマルシェの産みたて卵をお届けしますから……!」
「今欲しいんだよ、今!!」
「トワさん」
 白雪が口を挟んだ。
「もう結構です。リセさんの昼食に間に合わなくなりますから」
「けど、お前!」
 これだけ苦労して、ブランマルシェを捕まえたのだ。
 それに、その発端を作ったのは白雪である。
 卵が手に入らないのなら、なんのために、傷だらけになったのかわかりゃしない。
 右手など、さきほど白雪が治療してくれなければ、血の海のままだったのだ。
「お前は……あのリセにこいつの卵を食わしてやりたかったんだろーよ?」
「ないものを駄々こねてもしかたありませんから。それより、他の場所で卵を調達しましょう。時間がありません」
「……姫野……」
 その横顔が少し寂しそうにみえて、トワは胸がギュっと締め付けられるような気がした。
 白雪は、表情を一切変えない。
 言葉遣いも、いつもの通り落ち着いて淡々としている。
 なのに、彼女がきっと残念がっているのだ、と思うのは何故だろう。
「…………しゃあねぇな。お前を先にリセのマンションに届けてやるよ。俺が後で卵だけ、近くで買って、持って行ってやるから」
「しかし」
「いいか誤解すんな。俺様の今日のすばらしい功績と、この顔の傷に免じて協力してやる。決してあのアホな風邪ひき野郎のためじゃねぇ」
「意味がわかりません」
「黙ってきいてろ。姫野、お前が誰にどういう態度とろうが、俺の知ったこっちゃねぇ。けど、アイツは特別なんだなってことはよくわかった。だから、そういうのも含めて認めてやる」
「……やはり意味が」
「わからんでいいっつの! じゃ、そういうことで、車に帰るぞ」
 トワはくるりと方向転換して、商店街に踏み出した。
 と、そのとき。
「あ」
 と声を上げたのは、養鶏場の主人だった。
「……卵……」
 振り返ると、ブランマルシェを抱いていたその主人が、湯気の立っている白い卵をひとつだけ、手にしていた。
「……ブランマルシェの卵です。いやぁ、運がいいですね」
 そう言って、白雪に手渡している。
 トワはあんぐりと口をあけた。
「この……この……スペシャル・スカポンタン・クリーチャー!!」
 今かっこよくきめかけた自分は一体何だったんだと、問いたくなる。
 白雪が受け取った卵をじっと見て、しばらく黙った。
 そして、トワのほうを見た。
 
 エメラルドの瞳と目が合う。


「ありがとうございます」


 彼女が、ちょっとだけ嬉しそうにそう言った。
 
  



 

 

「……でー、俺様のすばらしい活躍によって、見事ブランマルシェは元の鞘に戻ったっつーわけよ。優秀賞? 最優秀エージェント賞? そういうの総ナメって感じ?」
「……あー、そ」
「見ろよこの勇姿。顔の絆創膏、手の包帯。いいか、リセ。今お前が持ってるそのカップの中身は、全て俺様の血と、汗と、涙の結晶だと思ってありがた〜〜〜〜〜〜〜〜く頂けよ」
「……あー、ハイハイ」

 都内のマンション。
 病床にふせっているオレンジ頭の彼は、トワの意思に反して全く有難いなどと思っていない態度を見せた。
 だが、白雪から渡されたカップは大事に両手で包み込み、自分の息で熱を冷ましている。
 白雪はというと、清潔そうな白いシーツの傍らで体温計を手にしていた。
 それを掲げて、数字を確かめている。

「熱は、聞いていたより酷くないようですね」
「……まぁ、朝からずっと寝てたからかな……」
 リセは弱々しくそう言って、カップの中身を口にした。
「お味が口にあいませんでしたら、申し訳ありません」
「いや、美味いよ、これ」
 当たり前だ。と、トワは口にしかけたがやめておいた。
 白雪がリセの言葉に、相槌をうつ。
「そうですか。安心しました。卵はひとつしかありませんでしたが、飲む分にはたくさんつくりましたので、どうぞ」
「これ、何のスープ?」
「…………ミイラの骨とウサギの蒲焼で出汁をとり、ワニの肉とヘドロ地で取れた野菜を具に加えましたスペシャルスープです」
「うそつけっ!」
「興奮すると熱があがりますよリセさん」
「誰がそうさせてんだ」
「私でないことは確かかと」
「わかってて言ってんだろ、白雪! お前な、人が風邪のときくらい……」
 と、リセが言いかけて、そのままくらりと体を揺らした。
「……だ、だめだ……ツッコミすら生死にかかわる……」
「お気の毒に」
「……って、思ってもない顔で言うなっ!」
 相変わらず、リセは突っ込みで忙しい。
 白雪といると、自然にこうなるのだろう。
 ご苦労なことだ、とトワは思ったが、内心、それをかわいそうだとは思わない自分に気がついた。
「……んじゃー、俺、もう帰るな。ゲームしたいし」
「……では私も、これで」
「……え? ああ……」
 立ち上がったトワと白雪を、リセがベッドから見ている。
「あのさ、二人とも…………。サンキュ」
「ハッ、俺様、お前に貸しひとつだな。いや、二つ? 三つ?」
「……素直に礼を言えば、お前というやつは……っ」
「気にすんな」
「気にするわ!」
「じゃ〜あな〜!」

 リセのマンションのドアを抜け、トワは伸びをした。
 疲れた半日だった。明日はまた出勤なので、今日の午後はゆっくりするに限る。


「姫野、送ってくぜ」
「よろしくお願いします」
「……ところでさ……」
「はい」
「あのスープ、マジで何?」
「……厳密にいうと、スープではないのですが」
「まさか、あんな材料で作ったわけじゃねーだろ? 商店街にンな怪しげな店なかったしさ。それに、ブランマルシェの卵も入ってる」
「もちろんです」
「この俺様までも、からかうつもりか?」
「いいえ。ですが」

 白雪が立ち止まった。
 つられてトワも立ち止まる。

「――トワさんが風邪をひかれる時までの、お楽しみということで」







 ちなみに翌日。
 リセは仕事に復帰した。
 トワが風の噂にきいたところによると、リセは出勤当初、二日酔いをしていたらしい……。


 fin.